波戸康広の感動物話ヾ(◎´∀`)ノ〃{♪♪♪)

日韓W杯の最終メンバー発表を波戸康広は妻と共にテレビで見ていた。自国で行われるサッカー選手にとっての夢舞台、ワールドカップ。そのメンバーに選ばれる、誇り高き23名がまもなく発表されるのである。
たが彼にはネガティブな予感があった。「俺は選ばれないだろうな...」
スペインとのテストマッチで代表デビューを果たし、試合後中田ヒデから「波戸は良かった」と名指しで評価され、以後無尽蔵のスタミナを武器に代表の右サイドに定着し最終メンバー入りは間違いないとされていた。
しかしボランチやサイドもこなせる明神の台頭もあり、テストマッチでは出場時間も激減、さらにメディアでは「トルシエは代表の精神的支柱として、中山や秋田らのベテランを選ぶのでは」といった憶測も飛び交い、 彼は一気に「当落選上の選手」となってしまったのである。
そして日本中が注目する運命の時が訪れる。GK3名の名前が呼ばれた後、DFの発表となった。そして...
秋田豊、背番号2」 この瞬間、波戸は自身の落選を確信した。なぜなら2番は彼が代表で永く背負っていた番号だったからである。
「ダメみたいだね..」彼は妻に言った。平静を装っていたが顔は引きつっていた。
「大丈夫だよ。MFで選ばれるよ」 妻は笑顔で彼に返したが、彼女も状況を悟っていたのか目には涙をいっぱいに浮かべていた。
MFの発表も終わり部屋は異様な空気になった。波戸はうつむいたまま何も言葉を発することができなかった。妻は既に大粒の涙が頬を伝っていた。MFにももちろん彼の名はなかった..
波戸は半ば放心状態となっていた。自分に対するくやしさ、情けなさ、妻に対する申し訳ないという気持ち。いろいろな想いが頭の中を渦巻いていた。
しかし妻はそんな彼に、泣きながら、しぼり出すような声でこう言った。「まだ...FWで選ばれるかもしれない...よ」
波戸は「それはありえねーから」と小さくつぶやいた。しかし彼は「俺のサッカー人生が終わった訳じゃない。支えてくれる妻のためにもこれから頑張ろう」とこの時誓ったのである。